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パラボラ(1)-放物線の焦点位置を計算する

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パラボラアンテナ(Parabolic Anntena)の形状を計算する。 (1)半径(R)、(2)(お椀の)深さ(δ)が与えられたとき、焦点位置(F)がどこにくるかを推定する課題。パラボラアンテナは放物線(Y=aX2)を回転させた「お皿」だ。

Parabolic-surface.jpg

上の図の説明;

  • 1000 x 1250の四角形の左下から、1000 x 200 への曲線が放物面。
  • パラボラの半径:Rが1000mmなので、アンテナとしては直径2mを想定している。
  • この放物面の接線に直行する垂線に対して、垂直に落ちてくる平行線(入射する電波のイメージ)と出射方向は鏡像になる。(入射角=出射角)
  • これを放物面の何点かで描画し、上図の場合では1250mmが収束点となる。

放物線のグラフを眺めていたが、幾何学的に解けそうも無さそうだ。そこで、チカラ技ではあるが、Dとδのパラメータを振った放物線をエクセルで用意して、CADに注入、焦点位置(F)を推定した。 手っ取り早く結論;

F.jpg

となります。単位はmmでもmでもOK。 具体的な作業手順は以下のようなものです。宜しければ、下記リンクにお越しください。

  1. Excelとエディタを使って、CADに渡す放物線のデータ(SCR)を作る。
  2. CADにて放物線のデータ(SCR)を読み込んで、放物線を描画する。
  3. Rとかδを振ったら、規則性が見えてきた。

複雑な形状を生成する作業は、CADにデータを注入すると、手間が少なくて済みます。これまで従事してきた、シミュレーション分野とか、半導体用フォトマスクの作成で、PCで出来ることはPCに任せようというのを痛感しました。以後年月が経ちましたが、RPAなどに進化して、進化を続けているようです。 皆様のお仕事に役立ちましたら、幸甚です。

放物線をCADで書いてみる。ここでは、Dassault社のSolidWorksの2次元CAD「DraftSight」を使用しましたが、業界標準のAutoCADでも実行可能です。 書いてみたいのは下記のようなイメージ。

P-2.jpg

さて、Y=X2のグラフは下表のように

X Y(=X*X)
0 0
1 1
2 4
3 9

具体的に、上記の座標に線を書くためCADに対してキー入力するのは

CADの命令
line(改行)
0,0(改行)
1,1(改行)
2,4(改行)
3,9(改行)
(改行)

というようなものになる。 AutoCAD (もしくは今回使用したDraftsight、操作がほぼ互換)では、打ち込む命令をテキストファイルに書いた「スクリプト」(拡張子は*.scr)を読み込ませる「SCRIPT」という命令がある。 CAD上でコンソールに対してコマンドを発出して線を描画するには、lineコマンドを発出した後、X1座標とY1座標は「,」(カンマ)区切りで与える。さらに次の地点は続く行で、X2座標とY2座標を「,」(カンマ)区切りで与える。以下この繰り返しで、(X1,Y1)-(X2,Y2) ...の折れ線が描画できる。 これは、エクセルシートでX,Y座標を作成し、CSVでカンマ区切りのデータを出力すれば、エクセルで作成したデータをCADで活用できそうだ。 具体的には、Excelでの保存形式のCSV(カンマ区切りテキスト,拡張子は*.csv)の機能を使って放物線のx,y座標のデータをカンマ区切りの形式で出力する。その後テキストエディタにより冒頭に「line命令」を書き足す。最後に、CAD上での「SCRIPT」命令を使って、CAD平面に放物線を描画する。 まず、エクセルのセルの記述を説明する。図は再掲となるが半径:500mm、高さ:100mmの放物線をCAD平面に書くよう、エクセルのシートでパラメータを調整する。

P-2.jpg

さて、エクセルのシートの作り方の指針;

  • 座標は500行とする。各セルの増分は1。500行目でx=500(=R)となる。
  • xの値を、500*500で割って、高さ分の100を掛ける。(500行目のx=500で高さy=100になるように調整する)
  • 半径:Rと高さ:δをセルで入力し、パラメータとして渡す。パラメータを変更したスクリプトファイルを効率的に出力するため。
  • 従って、各行の増分と高さはRとδに比例、YはR2で割る計算になる。

さて、エクセルを起動してシートの作成に取り掛かる。(起動~新規~空白のブック)。

A B
1 500
2 =1/500*$B$1 100
3 =$A$2 =(A3*A3)/($B$1*$B$1)*$B$2
4 =A3+$A$2 =(A4*A4)/($B$1*$B$1)*$B$2

ここで各セルの説明;

  • B1 : パラボラの半径R(500mm)
  • A2 : A列(X)の1行ごとの増分。
  • B2 : パラボラの高さδ

表の内容をシートに入力する。

excel-1.jpg

A4,B4のセルをアクティブにする。

excel-2.jpg

B4セルの右下にマウスポインタを置き、下方向にドラッグして、繰り返し計算させる。

excel-3.jpg

510行位まで続行した後、不要な503行以降を除去する。

excel-4.jpg

出来上がったエクセルのファイルを下記に置く。

Parabola20210402.zip

CSV形式で保存する。

excel-5.jpg

警告が出るが、「はい」を押して続行。

excel-6.jpg

生成されたCSVファイルをメモ帳から開く。(右クリック>プログラムから開く>メモ帳)

notepad-1.jpg

先頭2行を削除後、先頭行を「line(改行)」とする。また、末尾行に(改行)のみの空白行を入れる。その後、形式は「すべてのファイル(*.*)」を選択して、"Paraboric-Sample.scr"と拡張子"scr"として保存する。

notepad-2.jpg

だいぶ長くなりましたが、これで放物線のデータ(SCR)が準備できました。 次の手順で、SCRをCADに読み込ませて、焦点位置を図形から推定します。 次の手順に進む。

前項で作成したスクリプトファイル(SCR)を、CAD(DraftSight-2021)で読み込み、パラボラ面を描画する。そして、放物面の収束点を求める手順を以下に紹介する。

(1)CADを起動して新規作成ボタンを押す。

CAD210402-1.jpg

(2)書式を尋ねてくるのでJIS図面のひながたを選択

CAD210402-2.jpg

(3)CADの画面が立ち上がる。

CAD210402-3.jpg (4)"script"コマンドを発出。

CAD210402-4.jpg (5)どのスクリプトを使うのか聞いてくるので、選択する。

CAD210402-5.jpg (6)スクリプトの読み込みを繰り返す。R100,200,500,1000,2000(mm)を描画した。

CAD210402-6.jpg

(7)R100とR200の放物面の原点付近を拡大。どちらの曲線もあえて(0,0)から描画しなかったのは、後程の手順でのポリライン(折れ線)として別々に選択できるよう、あえて連結しない。

CAD210402-7.jpg (8)さっそく"pedit"コマンドを発出し、lineの集合を折れ線に変換する作業を開始する。

CAD210402-8.jpg

(9) pedit >線を選択>一つにしますか?には"y"で回答、と進める

CAD210402-9.jpg

(10)R=100の曲線全体を選択する。隣接するR=200にかかってもOK。

CAD210402-10.jpg

(11)エンターを入力してpeditコマンドから抜ける。

CAD210402-11.jpg

(12)R=100をクリックしてみる。1本のスプラインになっていることが判る

CAD210402-12.jpg

(13)新しく100という画層を作る。R=100の放物線を「画層100」に移動するため。

CAD210402-13.jpg

(14)「画層100」にR=100放物線を移動する。

CAD210402-14.jpg

(15)座標(0,0)から(100,100)に四角形(Rectangle)を書く。その後、四角形をexplode(分解)して、4本のline(線分)にする。

CAD210402-15.jpg

(16)高さ100を4等分する線を書きたい。四角の下端を選択し、offsetコマンドを発出し、距離は25と設定する。

CAD210402-16.jpg

(17)y=25, 50, 75 にそれぞれ水平線を描画する。これ以降、y=25, 50, 75, 100で放物線の接線と垂線を描画していく。

CAD210402-17.jpg

(18)まずはy=50での作業を例にする。放物線とy=50の交点を窓ズームで拡大する。

CAD210402-18.jpg

(19)拡大したところで、放物線をクリックすると、節点と中点が表示される。交点を挟む、2つの中点がX軸となるよう、Z軸周りに座標系を回転する。

CAD210402-19.jpg

(20)節点の選択後、X軸が接線方向になったことをアイコンで確認する。その後直交モードを有効にして、Y=50と放物線の交点から、Y軸方向に線を引く。これにより、「接線」に垂直な「垂線」を得る。

CAD210402-20.jpg

(21)「表示」ボタンで、もとのX,Y座標系に戻す。

CAD210402-21.jpg

(22)パラボラ面は無限遠から(Y軸平行線)が1点の焦点に収束する。そこで、放物面と垂線の交点を起点に、Y軸方向に線を引く。

CAD210402-22.jpg

(23)パラボラ面で出射する方向は、鏡と同様に、「入射角=出射角」として反射する。そこで入射方向の線を垂線に対して、mirror(鏡像)をとる。これにより出射方向の線を得る。

CAD210402-23.jpg

(24)Y=25, 75, 100 でも(18)~(23)の作業を繰り返す。

CAD210402-24.jpg

(25)作業上煩わしいので、放物面と枠線を非表示の画僧に退避する。その後、Y軸、(0,0)-(0,100)の線分に出射方向の線を延長する。1点に収束しているのが判る。

CAD210402-25.jpg

(26)垂線や入射線も同様に延長する。

CAD210402-26.jpg

(27)放物線と枠線を再度表示する。収束点はF=25mmと求まる。

CAD210402-27.jpg

これでR=100, δ=100のとき、F=25という結論を得ました。 描画したCADファイル(dwg)を下記リンクに置きます。(zipフォルダに圧縮済)

Parabolic-210402.zip

次の手順ではDとδのパラメータを変えて、定式化を試みます。

パラボラ(4)-Rとかδを振ったら、規則性が見えてきた

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前項のCAD操作で、パラボラの直径:Rと深さ:δが与えられたとき、焦点:FをCADから解く方式を紹介した。さらに下表のようにRとδを変化させFを求めた。まずはRの変化;

R δ F
100 100 25
200 100 100
500 100 625
1000 100 2500
2000 100 10000

次に、δを変化させたときの挙動は以下;

R δ F
1000 50 5000
1000 100 2500
1000 200 1250

以上の結果の図面ファイルを置く。(dwgをzip圧縮)

Parabolic-210402.zip

表を見てみると、

  • Rの2乗に対して、Fが比例。
  • δに対して、Fが反比例

ということで式を起こす。δに対して4を掛けると丁度良い。 よって結論;

F.jpg

ということになりました。

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